ブロックチェーンにおけるOracleとは？その役割と重要性を解説

ブロックチェーン技術はビットコインをはじめとする仮想通貨の基盤として広く認識されていますが、その応用範囲は仮想通貨に留まりません。

ブロックチェーンは、透明性・信頼性・分散型管理といった特徴を持つため、さまざまな産業やビジネスにおいて革新をもたらしています。

しかし、ブロックチェーンが完全に自己完結したシステムとして動作するためには、外部データの取り扱いが必要です。ここで重要な役割を果たすのが「Oracle（オラクル）」です。

Oracleとは？

Oracle（オラクル）はブロックチェーン上のスマートコントラクトに外部データを提供するための「ブリッジ」のような役割を果たす技術です。

ブロックチェーンは、その性質上、外部データやシステムとの直接的な通信ができません。これはブロックチェーンのセキュリティや不変性を保つために重要な制約ですが、外部の現実世界の情報（天気、株価、スポーツの試合結果など）を必要とするアプリケーションにとっては不便です。

ここでOracleが登場します。

Oracleは外部データソース（API、データフィード、ウェブサービスなど）から取得したデータをブロックチェーン上に取り込み、スマートコントラクトがそのデータに基づいて動作できるようにします。

Oracleの仕組み

Oracleの基本的な役割は、以下の3つのステップで説明できます。

データの取得

Oracleは、特定の外部ソース（例えば、気象情報や金融市場のデータ）から情報を取得します。この情報は通常、信頼できる第三者または公開されたAPIから取得されます。

データの検証:

取得されたデータが正確かどうかを検証するプロセスが含まれます。複数のOracleが同じデータを提供することで信頼性を高める手法が一般的です。

データの提供

検証後、Oracleはブロックチェーンにデータを提供し、スマートコントラクトがそのデータに基づいて動作します。これにより、スマートコントラクトが外部のリアルタイムデータを活用することが可能になります。

Oracleの種類

Oracleにはいくつかの種類がありますが、主に以下のようなタイプに分かれます。

• 中央集権型Oracle
• 分散型Oracle
• ソフトウェアベース型Oracle
• ハードウェアベース型Oracle

中央集権型Oracle

中央集権型Oracleは、単一の信頼できるソースからデータを提供する形式です。このタイプのOracleは構造が単純で効率的ですが、データが一つのソースに依存しているため、信頼性やセキュリティに課題が生じることがあります。

分散型Oracle

分散型Oracleは、複数のデータソースから情報を収集し、相互にデータを検証するシステムです。これにより、中央集権型Oracleに比べて信頼性や耐改ざん性が向上します。代表的なプロジェクトとしては、Chainlinkが有名です。

ソフトウェアベース型Oracle

ソフトウェアOracleは、WebサービスやAPIからデータを取得するシステムです。外部のデータベースやクラウドシステムとの連携に特化しており、幅広い分野で利用されています。

ハードウェアベース型Oracle

ハードウェアOracleは、IoTデバイスやセンサーからリアルタイムのデータを取得します。たとえば、スマート農業において土壌の湿度や気温のデータをスマートコントラクトに提供するような応用が考えられます。

Oracleの課題

Oracleは、ブロックチェーンに外部データを提供するという重要な役割を果たす一方で、いくつかの課題も抱えています。

信頼性

Oracleが提供するデータが正確であるかどうかが重要です。誤ったデータが提供された場合、スマートコントラクトが意図しない動作をするリスクがあります。

セキュリティ

中央集権型のOracleは、攻撃者によって改ざんされるリスクがあります。分散型Oracleを用いることでこのリスクは軽減されますが、完全に排除されるわけではありません。

スケーラビリティ

特にリアルタイムのデータを扱う場合、Oracleがどの程度迅速にデータを提供できるかが問題となります。ブロックチェーン自体のスケーラビリティと合わせて、Oracleも効率的なデータ提供を行う必要があります。

Oracleの未来

Oracleの技術はブロックチェーンの進化に伴い重要性を増しています。

スマートコントラクトが外部のデータを参照できることで、金融、保険、ヘルスケア、サプライチェーン管理など、さまざまな産業で新しいユースケースが生まれるでしょう。

たとえば、保険業界では、天候データを参照して自動的に保険金を支払うスマートコントラクトが考案されています。

また、分散型金融（DeFi）においても、資産の価格データをOracle経由で取得することで、より安全かつ効率的な金融取引が可能となります。

Oracle関連の仮想通貨（暗号資産）

Oracleに関連する仮想通貨として、LINK（Chainlink）やPYTHが挙げられます。

LINK（Chainlink）とPYTHは、どちらもブロックチェーンのOracle技術に関連する仮想通貨ですが、それぞれ異なる目的や特徴を持っています。

Chainlink（LINK）は広範な用途に対応できる分散型Oracleネットワークとして、ブロックチェーンと外部世界をつなぐ主要な技術です。

一方、Pyth Network（PYTH）は、特に金融市場向けの高精度な価格データに特化しており、取引や担保管理における信頼性を高めます。

どちらのプロジェクトも、ブロックチェーン技術の発展に不可欠なOracleの役割を果たしており、異なるニーズに応じたソリューションを提供しています。

以下では、それぞれについて詳しく説明します。

LINK（Chainlink）

Chainlink（チェーンリンク）は分散型Oracleネットワークとして非常に有名です。スマートコントラクトが外部データを参照できるようにするためのインフラを提供しています。

ChainlinkのネイティブトークンがLINKで、このトークンはネットワークの運用に必要な手数料の支払いなどに使用されます。

Chainlinkの特徴

• 分散型Oracleネットワーク

Chainlinkは単一のデータソースに依存しない、複数のノードによって分散されたOracleネットワークです。この分散型の仕組みによってデータの信頼性が高められています。

• セキュリティと信頼性

Chainlinkのネットワーク内のノードは正確で信頼できるデータを提供するためにインセンティブが与えられており、不正確なデータを提供したノードにはペナルティがあります。この仕組みが、システム全体の信頼性を向上させています。

• 広範な導入実績

Chainlinkは分散型金融（DeFi）や保険、サプライチェーンなど、さまざまな分野での導入実績があります。特に、DeFiプロジェクトにおいては、価格データをChainlinkのOracleを通じて取得するケースが多いです。

• LINKトークンの役割

LINKトークンはOracleネットワークの報酬および手数料の支払いに使用されます。ノードオペレーターは、データ提供に対してLINKトークンを受け取り、スマートコントラクトのユーザーはデータ使用のためにLINKトークンを支払います。

Chainlinkの代表的なユースケース

• 価格フィード

DeFiアプリケーションでLINKを使って資産価格のリアルタイムデータを提供することができます。

• 保険契約

スマートコントラクトを活用し保険業界で気象データやその他の外部データを取り入れて自動的に保険金を支払うシステムに利用されています。

※SWIFTとChainlink（LINK）の関連性については、こちらの記事にて詳しく説明してます

PYTH（Pyth Network）

Pyth Networkは主に金融市場向けに設計された分散型のOracleプロジェクトです。

Chainlinkとは異なり、Pythは特に高精度な価格データの提供に特化しており、主にトレーダーや金融機関向けのサービスを展開しています。

Pyth Networkのユニークな点は従来の金融市場から直接データを取得し、それをブロックチェーン上で利用できるようにする点です。

Pyth Networkの特徴

• 高精度な価格データ

Pythは従来の金融機関やプロのトレーダーから直接データを取得し、仮想通貨や株式、コモディティなどの価格データを提供します。このため、特に金融市場のデータに依存するDeFiアプリケーションに適しています。

• データプロバイダー

Pyth Networkはニューヨーク証券取引所（NYSE）やシタデル証券（Citadel Securities）など、金融業界の一流企業からのデータを利用しています。こうした企業からの直接のデータ供給により、Pythの提供する価格情報は信頼性が高く、リアルタイム性が求められる取引にも対応できます。

• Solanaブロックチェーンとの連携

Pyth Networkは、特に高速で低コストな取引が可能なSolanaブロックチェーンと密接に連携しています。Solana上の多くのDeFiプロジェクトでPythのデータフィードが利用されています。

• データ精度向上の仕組み

Pythではデータプロバイダーが提供する価格データを集約し、その精度をさらに向上させるために多層的な検証プロセスが行われます。これにより、最も正確な価格が利用者に提供されるようになっています。

Pythの代表的なユースケース

• DeFiの価格オラクル

Pythの高精度な価格データは、特にSolanaを中心としたDeFiアプリケーションで使用されています。これにより、取引や担保管理などのプロセスで信頼できる価格データを提供します。

• 金融商品取引

株式や商品市場のデータをリアルタイムで提供することで、プロのトレーダーや機関投資家向けに利用されています。

Chainlink（LINK）とPyth Network（PYTH）の比較まとめ

特徴	Chainlink（LINK）	Pyth Network（PYTH）
対象分野	幅広い外部データ（価格データ、天気情報など）	主に金融市場の高精度な価格データ
導入事例	DeFi、保険、サプライチェーンなど多分野	DeFi、金融市場向け
データソース	多様なデータ提供者（API、IoTなど）	主要な金融機関や取引所からのデータ
ブロックチェーン	Ethereum、BSC、Polygonなど多数	主にSolana
トークン	LINKトークン	公式トークンの詳細は現時点では不明確

Oracle まとめ

ブロックチェーンにおけるOracleは、外部データとスマートコントラクトを結びつけるための重要な技術です。

その種類や実装方法はさまざまですが、いずれにせよOracleなしでは、ブロックチェーンアプリケーションの多くは実現不可能です。

今後、Oracle技術の発展とともに、ブロックチェーンの応用範囲はさらに広がることでしょう。